0号患者違い

イタリア北部の11の自治体が封鎖される原因となった集団感染の0号患者について誤報がありましたので訂正します。

2月22日のエントリー(掲載は27日)記事「イタリアの落とし穴」で

“~北部ロンバルディア州の街で集団感染にも近いケースが発覚しました。38歳のイタリア人男性が新型コロナウイルスに感染し男性の妊娠中の妻も感染。また男性が所属しているスポーツクラブのメンバーや医療関係者などにも感染していることが次々に明らかになっています”

と書きました。

そこで言及した38歳のイタリア人男性とは、いわゆる0号患者(インデックス・ケースindex case)のことでした。だが正確には彼は、集団内の最初の患者である0号患者ではなく、第1号患者です。

38歳の男性は中国に行ったことはなく、彼が発病前に会っていた友人の男が上海を訪ねていました。するとその友人の男が最初の患者、つまり0号患者と見られたのですが、ウイルス検査は陰性と判明。そのため38歳の男性がどこでどのように感染したのか分からないまま、感染拡大が続いている、というのが今現在の状況です。

当初の情報では、38歳の男性は武漢を旅した、となっていましがそれは友人が訪ねた上海の間違いだったようです。ふいに感染者が続出した混乱の中で、世界恐慌の震源地である武漢の名がごく自然に独り歩きをした、ということなのでしょう。

なお、0号患者である可能性がある上海帰りの友人が、陰性と判断された後も繰り返し検査を受けたがどうかは不明です。ウイルス検査には間違いが多いという情報があります。日本のクルーズ船の乗客の検査でも、最初の検査は陰性で2回目に陽性と出たケースがあったと記憶します。

イタリアの医療のレベルは高く、十分に信頼に値します。またペストなどの伝染病と戦ってきた歴史もあり、他の欧州の先進国と同様に疫病の調査、予防、治療にも熟達しています。従って0号患者かもしれない上海帰りの友人の扱いに抜かりはなかったとは思います。が、少し気にならないでもありません。


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ベニスカーニバルもサンレモ音楽祭も取り憑き殺す激爆ウイルス

から

コロナウイルスよりも毒性の強い魔物

までの

間の記事4本が下書きのまま投稿されずに残っていました。そこで本日(2月28日)一斉に公開しました。記事は時系列に:

1「イタリアの落とし穴

2「バタフライ・エフェクト

3「戒厳令も敷けるのが真の民主主義かも

4「パニクらないパニック

です。

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パニクらないパニック

2020年2月25日(伊時間)現在、イタリアの新型コロナウイルス感染者数は231。死者7人。全員が高齢者で基礎疾患がありました。今のところ感染は北部イタリアに集中しています。大部分がミラノが州都のロンバルディア州と、ベニスが州都のヴェネト州。

ロンバルディア州の10の自治体とヴェネト州の一つの自治体は封鎖されています。封鎖とはそれらの自治体の出入り口に重武装の警察の検問が設けられて、ヒトとモノの動きを規制すること。軍隊もスタンバイしています。要するに地域限定の戒厳令、と考えれば分かりやすと思います。

封鎖地域内では学校や図書館を含む全ての公共施設が閉鎖され、レストランやバールなどの歓楽施設も閉まります。開いているのは食料品店や薬店などの生活必需品を扱う店のみ。薬店などは逆に強制開店させられている場合がほとんどです。

その状況はメディアによって逐一報道されます。そのために封鎖地域に近い市町村でも静かに恐慌が起きます。筆者の住まうあたりも「感染爆心地」から遠くないため、パニックになっていると言うのはまだ当たりませんが、完全に穏やかでもありません。

その証拠は友人知己との話の中などに出てくる恐怖感の表出の多さ。またスーパーマーケットなどの状況などにあります。

昨日、食料の買出しに出ました。いつものようにわざと昼食時を選びました。買い物客がぐんと少なくなるからです。店の様子は普段と何も変わりませんでした。ところが精肉売り場に異変が起きていました。

製品棚が空っぽなのです。店員に聞くと、午前中に大勢の客が押し寄せて売り切れになった、と話してくれました。

3軒のスーパーを巡って興味深いことを発見しました。3軒のうち2軒は安売り店なのですが、その2軒の品薄が激しかったのです。

残る1軒は普通の値段(安売りを“売り”にしていないという意味で)の店で、そこも普段に比べてやや品薄の印象はありましたが、棚が空っぽという売り場はありませんでした。

それはもしかすると、貧しい人ほど不安におちいりやすい、ということの証かもしれない、とふと思いました。ネガティブな世情の犠牲になりやすいのはいつも弱者です。だから急ぎ防御の動きに出た、ということなのかもしれません。

筆者は金持ちではありませんが、ひどく貧しいというわけでもありません。普段安売りスーパーに足を運ぶのは、もちろん値段の魅力もありますが、自分が基本的に好奇心の強い人間だからです。

筆者はTVドキュメンタリーの制作やリサーチ、またプライベートの旅などでよくイタリア中を巡り歩きますが、どこに行っても真っ先に市場に足を運びます。市場を覗くのが好きなのです。そこには地域の人々の暮らしの息吹が満ちあふれています。それを感じるのが好きなのです。

スーパーマーケットを巡り歩くのも基本的には同じ動機からです。日常生活の場での行動ですから旅行中の気持ちと純粋に同じではありませんが、筆者を突き動かしているのはいつも人々の暮らしへの関心であり好奇心です。

さて、

「感染爆心地」の近くに住んでいると言いながら、のんびりと状況を読んだり自己分析などをしているのは、事態が切迫していないことの証です。できればこの心のゆとりを保ったまま感染終息の声を聞きたい、と切に願っていますが。。

※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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戒厳令も敷けるのが真の民主主義かも



2020年2月23日19:00現在、イタリアの「COVID-19」患者数 は152に増加。北部のロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテ、エミリア・ロマーニャ州と、中部のラッツィオの5州が感染地域です。

このうち最も感染者が多いのはミラノが州都のロンバルディア州。

ロンバルディア州とヴェネト州、ピエモンテ州の3州は、保育園から大学までの全ての学校を閉鎖し、公私に渡る集会や催し物、プロサッカーを筆頭にするあらゆるスポーツイベント、各種コンテストや祭り等々を当面の間は禁止するとしました。

ミラノのスカラ座を始めとする劇場や映画館、各種娯楽・歓楽施設も閉鎖します。また2月25日まで続くはずだったベニスカーニバルも即座に打ち切りとなりました。

またカフェやバールやパブやワインバーなどの営業は午後6時までに。ただしレストランは今のところは規制しません。だが状況によっては、明日にでも全ての店の閉鎖命令が出るものと考えられます。

厳しいように見えるそれらの措置は、過去にペスト流行の悪夢などを経験しているイタリアの基準では実はゆるい類の規制です。

今回、突然ウイルス流行の爆心地となったロンバルディア州の10の自治体と、欧州初の死亡者が出たヴェネト州の1つの自治体は、人の出入りを含む一切の活動が禁止・封鎖されました。

合計人口が5万人になるそれら11の自治体は、24時間態勢で警察の監視を受け軍隊もスタンバイします。つまりそこは、ほぼ戒厳令下に置かれることになったのです。

ほぼ戒厳令下に置かれているのは、筆者の住まいから遠くない地域です。筆者はロンバルディア州の住人なのです。

そればかりではありません。もうひとつの戒厳令発動地であるヴェネト州も、ロンバルディア州の隣接地です。ウイルス話や封鎖は他人事ではないのです。

さて、ここからはウイルスパニックにまつわるこぼれ話を記します。

事態が悪化すれば、筆者の住む村のあたりもたちまち“ほぼ”戒厳令下の状況に置かれる可能性が出てきました。そこで念のために明日にでも食料の買出しに出よう、と先刻妻と話し合いました。

ミラノから近く、筆者も息抜きのためにひんぱんに訪ねるスイスは、イタリア人通勤者を締め出さない、と表明しました。

スイスにはまだコロナウイルス感染者は出ていません。ところがイタリアのウイルス感染爆心地のロンバルディア州からは、多くのイタリア人が国境を越えてスイスに仕事に向かいます。

だからスイス政府は、イタリアの不安をやわらげようとして、わざわざそうコメントを出したのです。

一方、南部イタリアのナポリ湾に浮かぶ有名リゾート地のイスキア島は、北部のロンバルディア州人とヴェネト州人、また中国人の入島を拒否する、とわざわざ宣言しました。

ナポリもイスキア島も大好きな、且つロンバルディア州住民で中国人にも親近感を持つアジア人の筆者は、イスキア島の怖い主張に心が萎えました。

外国のスイスとはずいぶん違う対応だと少し悲しくもなりました。

新型コロナウイルス「COVID-19」」は厄介です。実にうっとうしく恐怖でもあります。だがもうひとつの真実も決して忘れてはなりません。

つまり「COVID-19」」は、今この時も世界中で蔓延しているインフルエンザに比べた場合、より小さな脅威です。インフルエンザの方がはるかに巨大な殺人疾患なのです。

それでも「COVID-19」が大問題であるのは、治療法が分からずワクチンもないからです。またその状況でウイルスが突然変異して、人類の制御力の及ばない死のパワーを獲得する可能性があるからです。

要するにわれわれは、ウイルスの正体が分からないからそれを恐れるのであり、また恐れなければなりません。それは真っ当な態度です。

だがイスキア島の態度は真っ当ではない。なぜなら島は、正体が分からないウイルスと正体が明らかな北部イタリア人と中国人を、敢えて一緒くたにして全て「分からないもの」と見なしているからです。

分からないもの」ですから、島は北部イタリア人と中国人を差別するのです。それは間違っています。

だが残念ながら、ウイルス・パニックは今後、世界中でイスキア島の誤謬と同じ現象や動きやトレンドをひんぱんに引き起こす可能性が高い。

その意味では「COVID-19」の真の恐怖は死の恐怖ではなく、それの蔓延によって人々の差別意識があらわになる現実であるのかもしれません。


※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

 

 

 

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バタフライ・エフェクト

「COVID-19」にまつわるイタリアの状況はめまぐるしく変化しています。言葉を替えれば、ウイルスの感染が急速に拡大しているのです。

イタリア時間の今朝早く筆者は、北部イタリアでふいに「COVID-19」患者が続出し、初の死者が出たと発信しました。それからほぼ9時間後の今、2人目の犠牲者が出たことを報告しなければなりません。

初めの死亡者は78歳の男性。今回の犠牲者は75歳の女性です。男性は感染経路が判然としない町の住人。女性は、38歳の男性を起点に広がっているミラノ近郊の感染被害者グループの一人です。

ちなみに亡くなった2人は、イタリアのみならず欧州初のヨーロッパ人の死者です。ヨーロッパで初めての「COVID-19」犠牲者は、先週フランスで死亡した80歳の中国人男性です。人種差別意識からではなく、多くの欧州の患者が中国人である(あった)事実を伝えるために、敢えて記しておきたいと思います。

ついでに言えば、2月21日以前の全てのイタリアの感染者はわずか3人。2人がイタリア旅行中の中国人。1人は武漢から帰国したイタリア人でした。

ところが、今日ここまでに感染者は40人近くにまで激増し、その全員がイタリア人です。感染は中国人の枠を超えて、明確に欧州地元の住人の間に広がっています。少なくとも2020年2月22日夕方現在のイタリアではそうです。

筆者は今、住まいからそう遠くない地域で感染が拡大している現実にこれまでにない危機感を覚えると同時に、イタリア政府が昨年、中国と「一帯一路」連携への覚書を交わした因果を深い感慨と共に繰り返し思ってます。

イタリア政府は低迷する経済へのテコ入れを主な理由に、反対するEUを押し切り国益を優先しつつ、独立独歩の精神にも恥じないやり方で中国と覚書を交わしました。結果、中国との関係が深まりヒトとモノの往来が急増しました。

それが今このときのイタリアの不幸を呼んでいるのではないか、としきりに思っています。

イタリアは中国で新型コロナウイルスの感染拡大が明らかになるや否や、中国政府の猛反発を意に介することなく台湾、香港、マカオを含む中国便を、世界で真っ先に全面禁止措置にしました。

その果断なアクションは恐らく間違っていません。

だが、そのときはすでに遅く、中国発の新型ウイルスは、イタリア-中国間の大量のモノとヒトの交流にまぎれてこの国に達してしまっていた。。。

いささか感傷的ながら、筆者はどうしてもそんな物思いから抜け出せずにいます。

※オリジナル記事2月24日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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イタリアの落とし穴

イタリア北部でふいに「COVID-19」が出現しました。ゾンビのように、という形容がそらぞらしいほどの唐突な印象。あるいは報道管制でも敷いていたのだろうか、と疑いたくなるほどです。突然に市中感染らしいケースも明らかになり、感染は急速に拡大しそうな様相を呈しています。

これまでのイタリアの「COVID-19」患者は3人でした。2人はイタリア旅行中の中国人夫婦。1人は武漢から専用機でイタリアに帰国した、56人のイタリア人のうちの1人で若いイタリア人男性です。中国人夫婦は回復し、イタリア人男性も状態は安定。ほぼ回復していました。

ところが事態は急展開。北部ロンバルディア州の街で集団感染にも近いケースが発覚しました。38歳のイタリア人男性が新型コロナウイルスに感染し男性の妊娠中の妻も感染。また男性が所属しているスポーツクラブのメンバーや医療関係者などにも感染していることが次々に明らかになっています。

同時にベニスが州都のヴェネト州でも2人の患者が出て、そのうちの78歳の男性が死亡。イタリア初の「COVID-19」犠牲者。こちらの2ケースは今のところ感染経路が不明です。

世界で初めて中国便をシャットアウトして、危機管理能力の高さを示したように見えたイタリアには、それ以前に既に新型コロナウイルスが侵入していた、ということのようです。

その見方が正しいなら、イタリアは中国の「一帯一路」構想を支持し、同国と覚書まで交わした政治のツケを払い始めた、とも言えるかもしれません。それというのも覚書以来イタリアには、中国人観光客が大量に押し寄せ、ビジネス関連の交流も活発になって人の行き来が急激に増えていたからです。

イタリアは突然、欧州で最も「COVID-19」患者の多い国になりました。劇的な展開に衝撃を受けているのは筆者だけではないでしょう。しばらくはこの驚異的な現象に目をこらしていこうと思います。それが「しばらくの間」の作業であることを祈りつつ。。。

※オリジナル記事2月22日 なかそね則のイタリア通信 より加筆転載

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コロナウイルスよりも毒性の強い魔物

2020年2月23日19:00現在、イタリアの「COVID-19」患者数 は152に増加。北部のロンバルディア、ヴェネト、ピエモンテ、エミリア・ロマーニャ州と、中部のラッツィオの5州が感染地域です。

このうち最も感染者が多いのはミラノが州都のロンバルディア州。

ロンバルディア州とヴェネト州およびピエモンテ州の3州は、保育園から大学までの全ての学校を閉鎖し、公私に渡る集会や催し物、プロサッカーを筆頭にするあらゆるスポーツイベント、各種コンテストや祭り等々を当面の間は禁止するとしました。

ミラノのスカラ座を始めとする劇場や映画館、各種娯楽・歓楽施設も閉鎖されます。また2月25日まで続く予定だったベニスカーニバルも即座に打ち切りとなりました。

またカフェやバールやパブやワインバーなどの営業は午後6時までに。ただしレストランは今のところは規制せず食料品店も同じ。だが状況によっては、明日にでも全ての店の閉鎖命令が出ることでしょう。

厳しいように見えるそれらの措置は、過去にペスト流行の悪夢などを経験しているイタリアの基準では実はゆるい類の規制です。

今回、突然ウイルス流行の爆心地となったロンバルディア州の10の自治体と、欧州初の死亡者が出たヴェネト州の1つの自治体は、人の出入りを含む一切の活動が禁止・封鎖されました。

合計人口が5万人になるそれら11の自治体は、24時間態勢で警察の監視を受け軍隊もスタンバイします。つまりそこは、ほぼ戒厳令下に置かれることになったのです。

ほぼ戒厳令下に置かれているのは、筆者の住まいから遠くない地域です。筆者はロンバルディア州の住人なのです。

そればかりではありません。もうひとつの戒厳令発動地であるヴェネト州も、ロンバルディア州の隣接地です。ウイルス話は他人事ではないのです。

さて、ここからはウイルスパニックにまつわるこぼれ話です。

事態が悪化すれば、筆者の住む村のあたりもたちまち“ほぼ”戒厳令下の状況に置かれる可能性が出てきました。そこで念のために明日にでも食料の買出しに出よう、と先刻妻と話し合いました。

ミラノから近く、筆者も息抜きのためにひんぱんに訪ねるスイスは、イタリア人通勤者を締め出さない、と表明しました。

スイスにはまだコロナウイルス感染者は出ていません。ところがイタリアのウイルス感染「爆心地」のロンバルディア州からは、多くのイタリア人が国境を越えてスイスに仕事に向かいます。

だからスイス政府は、イタリアの不安をやわらげようとして、わざわざそうコメントを出したのです。

一方、南部イタリアのナポリ湾に浮かぶ有名リゾート地・イスキア島は、北部のロンバルディア州人とヴェネト州人、また中国人の入島を全面拒否する、とわざわざ宣言しました。

ナポリもイスキア島も大好きな、且つロンバルディア州住民で中国人にも親近感を持つアジア人の筆者は、イスキア島の怖い主張に心が萎えました。

スイスとはずいぶん違うなぁ、と少し悲しくもなりました。

「COVID-19」の 新型コロナウイルスは厄介です。実にうっとうしく恐怖です。しかしもうひとつの真実も決して忘れてはなりません。

「COVID-19」」は、今この時も世界中で蔓延しているインフルエンザに比べたなら、より小さな脅威です。インフルエンザの方がはるかに巨大な殺人疾患です。

それでも「COVID-19」が大問題であるのは、治療法が分からずワクチンもないからです。またその状況でウイルスが突然変異して、人類の制御力の及ばない死のパワーを獲得する可能性があるからです。

要するにわれわれは、ウイルスの正体が分からないからそれを恐れるのであり、また恐れなければなりません。それは真っ当な態度です。

だがイスキア島の態度は真っ当ではありません。なぜなら島は、正体が分からないウイルスと正体が明らかな北部イタリア人と中国人を、敢えて一緒くたにして全て「分からないもの」と見なしているからです。

分からないものだから、島は北部イタリア人と中国人を差別するのです。それは間違っています。

だが残念ながら、ウイルス・パニックは今後、世界中でイスキア島の誤謬と同じ現象や動きやトレンドをひんぱんに引き起こす可能性が高い。

その意味では「COVID-19」の真の恐怖は、死の恐怖などではなく、それの蔓延によって人々の差別意識があらわになる現実かもしれません。

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ベニスカーニバルもサンレモ音楽祭も取り憑き殺す激爆ウイルス

2月のイタリアは例年、カーニバルとサンレモ音楽祭で活気づきます。カーニバルはイタリア全国で催される祭り。特にベニスのそれが有名です。また70年の歴史を持つサンレモ音楽祭は、5夜にわたって繰りひろげられるいわばイタリアの「紅白歌合戦」。

2月8日に幕を閉じたサンレモ音楽祭は、視聴率や広告収入が大幅にアップするなど近年にない盛り上がりを見せました。しかしメディアの注目が新型コロナウイルス・パニックに集中してしまい、本来ならもっと高くなるべき筈の祭りへの関心が、著しく削がれてしまいました。

一方ベニスカーニバルは、音楽祭と入れ替わるように2月8日に始まりました。ベニスには近年、時として地元の人々が嫌うほどの数の中国人観光客が押し寄せます。2月25日まで続くカーニバルには、しかし、中国人の姿は多くは見られません。新型コロナウイルスの侵入を恐れるイタリア政府が、1月末から全ての中国便を差し止めているからです。

イタリアが世界に先駆けて中国往来便を無期限全面禁止にしたのは、中国人観光客の激減という弊害はあるものの、どうやら正解だったようです。クルーズ船での感染問題が深刻な日本の状況と比較しての今のところの感触ですが、わざわざ日本とイタリアを比較するのにはそれとは別の理由があります。

新型コロナウイルス恐慌が起きる直前まで、日本は中国で最も人気の高いアジアの海外旅行先という統計が出ていました。一方イタリアは同時期、フランスやスペインまたイギリスなどの人気スポットを抑えて、中国人に最も人気のある欧州での旅行先になっていたのです。

欧州の4国はそれまでも同カテゴリーで熾烈な順位争いをしてきましたが、2019年3月、イタリアが中国との間に「一帯一路」への連携を約束する覚書を交わしたことで、この国に入る中国人観光客が爆発的に増えて、一躍トップに躍り出ました。

覚書以降、中国からの観光客は増え続け、昨年11月にベニスが史上まれに見る水害に襲われたときには、“水の都ベニスが中国人観光客の重さで急速に沈みつつある”というデマが飛ぶほどになりました。

そうした悪意ある風評は、中国人観光客のマナーの悪さや中国人移民の増加、また中国本土の一党独裁政権に対するイタリア国民の不信感など、これまでに醸成された負のイメージが相乗し錯綜して、深化拡大していったものです。

イタリアがいち早く中国便を締め出したのは、言うまでもなくパンデミックへの警戒感が第一義ですが、それ以外にもいくつかの理由があったと考えられます。その第一はEU(欧州連合)の反対を押し切って、G7国として初めて中国との間に前述の 「一帯一路」覚書を交わしたことへの反省です。

EUは中国の覇権主義への警戒感から覚書に難色を示しました。それに対してイタリアは「覚書は拘束力を持つものではなく、我々が望めばすぐに破棄できる」と弁解しました。だがEUの疑念は払拭されませんでした。そこで今回イタリアは、中国便を素早く且つ容赦ない形で排除して、EUの疑念を晴らそうとしたのです。

その施策は、国中にあふれるおびただしい数の中国人移民や、覚書を機に爆発的に増えた中国人観光客への違和感も持ち始めていたイタリア政府と国民にとって、都合の良い一手でもありました。また同時にそれは、観光産業への打撃を覚悟した策でもありました。

そうしたいきさつをひも解くと、イタリアと日本の置かれた状況は意外にも良く似ています。日本にはイタリアに見られるような中国人移民への苛立ちはないかもしれません。しかしながら観光客のマナーの悪さや、中国政府の覇権主義などへの反感は、イタリア同様に強いものがあるのではないでしょうか。

また、中国人観光客を拒否したときに、観光産業が強い悪影響を受ける点も両国は似ています。それでいながらイタリアは、たちどころに中国便を全面禁止にし、日本はそうはしませんでした。その違いが2月20日現在の両国のウイルス感染者数の差異になって現れた、と考えるのは荒唐無稽でしょうか。

日本に於けるウイルスの感染経路はクルーズ船であり航空ルートではない、という反論もありそうです。それに対しては「もしもクルーズ船のルートがあったならば、イタリアはきっとそこも大急ぎで閉鎖していただろう」と応じようと思います。要するに何が言いたいのかといえば、日伊両国間には危機管理能力の大きな差がある、ということです。

さらに話を続けます。伝統的にアバウトなようで実はしたたかなイタリア政府は、中国便を締め出す一方で、同国との仲を白紙撤回させる気はなく、航空便の全面禁止は行き過ぎだとして猛反発する中国政府に、施策は一時的な予防措置だと言葉を尽くして説得し、事態を沈静化させました。

畢竟イタリア政府は、EUや中国、ひいてはアメリカを始めとする世界の反応もしっかりと見据え考慮に入れながら、国としての峻烈な危機管理策をためらうことなく発動した、という解釈も成り立つのです。

いうまでもなく新型コロナウイルス恐慌がどこに向かうのか誰にも分かりません。またウイルスの脅威は実体よりも大きく喧伝されていて、今のところはむしろ風評被害また報道被害のほうがはるかに深刻なのではないか、というふうにさえ見えます。

いずれにしてもウイルスの暴走は気温が上がる春頃には終息に向かうと考えるのが妥当でしょうし、希望的観測も兼ねてそう願いたいと思います。そうなっても、また不幸にしてさらに長期化するにしても、イタリアの危機管理のあり方は日本が学ぶべき余地があるように思うのですが、いかがでしょうか。

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イタリアが大急ぎで中国便を締め出した理由(わけ)

イタリアの新型コロナウイルス感染者は、2月13日現在3人です。内訳はイタリア人1人と中国人旅行者夫婦。数は少ないもののメディアの騒ぎと国民の不安や関心は、世界中のどの国にも負けないほどに大きくなっています。

テレビの定時ニュースは、ほぼ間違いなくウイルス関連の話題で始まり、しかも放送時間も長い。それらのほかに特別番組が盛んに組まれています。

朝ワイドや昼ワイド、バラエティ番組やトークショーなどでも取り上げられ、新聞雑誌などの紙媒体もWEBも皆同じ。新型コロナウイルス一色になっています。

ウイルス関連情報の洪水の中で確実に醸成されていっているのが、中国や中国人への偏見差別や怨みや怒りです。

メディアはできるだけ人々の嫌中国人感情を煽らないように慎重な報道を続けていますが、事態が中国発の災難であることは子供でも知っていますから、人々の表立ってのあるいは秘匿した感情は抑えようがありません。

中国人移民の皆さんには気の毒ですが、そうした悪感情はSARSなど過去の中国発のリスクや、年々増え続ける中国人移民への苛立ち、また中国の一党独裁政権へのイタリア国民の反感などもからまっていて、一筋縄ではいきません。

イタリア政府はコロナウイルスの感染が中国で拡大し始めたのを見て、台湾、香港、マカオを含む中国便を、欧州で真っ先に全面的禁止措置にしました。先月末のことです。それは世界初の果断な動きでした。

イタリアの施策には中国本土はもとより台湾からも強い反発・抗議がありました。中国はイタリアのやり方は行き過ぎだと怒り、台湾はイタリアが「台湾も中国」とみなしていっしょくたにしたことに反発したのです。

各国に先駆けて、イタリアが中国往来便を締め出すというドラスティックな決定をしたのは、ウイルスへの恐怖もさることながら、昨年3月、中国との間に「一帯一路」構想を支持する旨の覚書を交わしたことが影響しているのではないか、と筆者は思います。

EUが懸念する中国の「一帯一路」構想に、イタリアがG7国として初めて支持を表明し、協力関係を構築する旨の覚書を交わしたときは、EU(欧州連合)は言うまでもなく米国を含む世界中が驚きました。

覚書は連立与党であるポピュリストの五つ星運動のゴリ押しで成立しました。一方の連立与党である極右の同盟はこれには懐疑的でした。また2019年9月、同盟に代わって連立政権に加わった民主党も、五つ星運動ほどには中国との連携には熱心ではありません。民主党はEU信奉者であるだけになおさらです。

「コロナウイルス狂乱が起きると“同時に”」と形容しても過言ではないほどの迅速な動きで、イタリアが中国便を全面禁止にした背景には、イタリア政府が、 「一帯 一路」問題でEUをいわば裏切ったことへの反省があったからではないか、と思います。

つまり、いの一番に中国便を締め出すことで、イタリアが中国とそれほど深い関係にあるのではない、とEUに向けてアピールしたかったのではないか。昨年3月に中国と覚書を交わした際イタリアは、EUからの批判に答える形で「覚書は拘束力を持つものではなくイタリアが望めばすぐに破棄できる」と弁解しました。しかしながらそれでEUの疑念が完全に払拭されたわけではありませんでした。

そこで今回イタリア政府は、中国便を素早く且つ容赦のない形で排除することで、中国との連帯がEUが疑うほど重いものではない、と当のEUと世界に向けて訴えようとしたのではないか。そしてそれは民意の大半にも沿うアクションであったと筆者は思います。

だが伝統的に、アバウトなようで実はしたたかなイタリア政府は同時に、中国との仲を白紙撤回させる気は毛頭なく、彼らの方策に抗議する中国政府に対しては、一時的な予防措置であることを、マタレッラ大統領を筆頭に政府首脳が言葉を尽くして説明し、事態を沈静化させました。

中国は一応抗議はしたもののイタリアの意図を受け入れました。イタリアの断固とした動きは中国政府をおどろかせた。いや、中国はイタリアのアクションをむしろ恐れさえしたのではないか。その証拠に中国本土で旧正月の休みを過ごしたイタリア在住の中国人の子供たちは、帰伊後に一斉に「自主的」に自宅待機を宣言して、しばらくは学校に行かないことを決めました。

その決定をしたのは、イタリアで中国人移民の割合が最も多い自治体「プラート」。フィレンツェの隣町です。町の中国人コミュニティは自らを進んで隔離して、子供たちが学校でウイルスを撒き散らす危険を避けたのです。その一糸乱れぬシンボリックな団体行動は、イタリアの思い切った処置に衝撃を受けた中国の強権政府が、住民に圧力をかけたから起きたと考えられます。

そうやって自粛行為をするのは、中国人移民にとっても恐らく為になることです。それというのも、コロナウイルスへの恐怖は残念ながらこの国の民心を惑わして、中国人への偏見差別を助長させています。それは伝播して日本人にまで及ぶ事態さえ起きました。中国人移民の皆さんが外出や目立つ行動を控えるのは、今の状況ではおそらく悪いことではない、というふうに見えます。

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ヤギ食えばおのこが立つかも島の秋

子ヤギ肉と成獣肉

先日、例によってイタリア・サルデーニャ島で子羊及び子ヤギ料理を探し求めていた筆者は、これまで味わった中では最も美味い羊の「成獣肉」膳に出会いました。子羊肉は中東や欧州ではありふれた食材ですが成獣肉のレシピはまれです。

筆者がヤギや羊肉料理(以下ヤギ肉に統一)にこだわるのは、単純にその料理が美味くて好き、というのがまず第一ですが、自分の中に故郷の沖縄へのノスタルジーがあるせいかも、と考えないでもありません。

沖縄の島々ではヤギ肉が食べられます。筆者が子供の頃は、それは貴重な従って高級な食材でしたので、豚肉と同様にあまり食べることはできませんでした。たまに食べるとひどく美味しいと感じました。

島々が昔よりは豊かになった今は、帰郷の際にはその気になればいくらでも食べることができます。が、昔のように美味いとは感じなくなりました。料理法が単調で肉が大味だからです。

ところがここイタリアを含む欧州や地中海域で料理される“子ヤギの肉”は、柔らかく上品な味がしてバラエティーにも富んでいます。ヤギ肉独特のにおいもありません。

貧困ゆえの食習慣

沖縄では子ヤギは食べません。成獣のみを食べます。子ヤギを食べないのは貧困ゆえの昔の慣習の名残りだろう、と筆者は勝手に推測しています。

小さなヤギは、大きく育ててから食肉処理をするほうがより多くの人の空腹を満たす食材になります。ですから島の古人は、子ヤギを食べるなどという「贅沢」には思いいたらなかったのです。

ヤギの成獣には独特のにおいがあります。それは多くの人にとっては不快な臭気です。だが臭気よりは空腹の方がはるかに深刻な問題です。それなので貧しい島人たちは喜んでヤギ肉を食べました。

食べるうちに人は臭みに慣れていきます。やがて臭みは臭みではなくなって食材の個性になります。さらに食べると、むしろ臭みがないと物足りない、というところまで味覚が変化していきます。それが島々のヤギ料理です。 


筆者の遠い記憶の中には、貧しかった島での、ヤギ肉のほのかなイメージがあります。たまにしか口にできなかったその料理のにおいは臭みではなく、「風味」だったのだと思います。

その風味は、筆者の中では今は成獣肉のそれではなく「子ヤギ肉の風味」に置き換えられています。つまりここイタリアを含む地中海域の国々で食べる「子ヤギ」肉の味と香りなのです。

子ヤギの肉にはヤギの成獣の肉の臭みはありません。肉の香ばしさだけがあります。食肉処理される子ヤギとは、基本的には草を噛(は)む前の小さな生き物だからです。

成獣肉の行方

筆者が知る限り、ここイタリアではヤギの成獣の肉は食べません。羊も同じ。牧童家や田舎の貧しい家庭などではもちろん食されているとは思いますが、市場には出回りません。臭みが強すぎるからです。

しかし、スペインのカナリア諸島では、筆者は一級品のヤギの成獣の肉料理を食べた経験があります。それにはヤギの臭みはなく肉もまろやかでした。秘伝を尽くして臭いを処理し調理しているのです。

トルコのイスタンブールでも、羊の成獣の肉らしい美味い一品に出会いました。その店はカナリア諸島のように「成獣の肉」と表立って説明してはいませんでしたが、風味がほんのりと子羊とは違っていました。

子ヤギや子羊肉を伝統的に食する文化圏の国々には、そんな具合に成獣の肉をうまく調理する技術が存在します。イタリアでも隠れた田舎あたりではおそらくそうなのだろう、と筆者が憶測するゆえんです。

人工処理

実は「レシピ深化追求」の歴史がなくともヤギの臭みをきれいに消すことはできます。そういう料理に筆者はなんとヤギ食文化「事件」当事者の沖縄で出会ったのです。ほんの数年前のことです。

ヤギ料理をブランド化し観光客にもアピールしよう、という趣旨で自治体がレストランに要請して、各シェフに新しいヤギ料理を考案してもらい、それを試食する会が那覇市内のホテルで開かれました。

たまたま帰郷していた筆者もそこに招待されました。びっくりするほど多彩なヤギ料理が提供されていました。どれも見た目がきれいで食欲をそそられます。

食べてみるとヤギ肉独特の臭みがまったくと言っていいほどありません。まずそのことにおどろかされました。だが味はどれもこれもフランス料理の、ま、いわば「二流レシピの味のレベル」という具合でした。

どの料理もシャレていて美しいのですが、味にあまり個性がない。ヤギ肉の臭みを消す多くの工夫がなされる時間の中で、肉の風味や個性も消されてしまった、とでもいうふうでした。

多くの場合、島々の素朴を希求して訪れる観光客に、それらのヤギ肉料理が果たして好まれるだろうか、と筆者はすぐに疑問を持ちました。

それらは全て美しくまとまり味がこってりとしていて、ひと言でいえば洗練されています。でもなにかが違います。いかにも「作り物」という印象で、島々の素朴な風情と折り合いがつかない。居心地がわるいのです。

女性が食の流行をつくる

言葉を替えれば、この飽食の時代に、ほとんどの日本人にとっては新奇、もっといえばゲテモノ風のヤギ肉料理が、はたして食欲をそそる魅力を持っているかどうか、という根本の疑念が筆者にはありました。

さらにいえば、それらの料理が女性の目に魅力的に映るかどうか、ということも気になりました。食の流行はほとんどの場合、女性に好まれたときに起きます。

それらの料理の「見た目の美しさ」はきっと、特に女性に好感をもたれるでしょう。だが、そもそもヤギ肉という素材自体には魅力を感じない女性の「嫌気」はどうするのか、という疑問がどうしても消えません。

肉の臭みが取れても、「ヤギは癒し系の動物」というイメージも食欲のジャマをしそうです。もっともヤギに限らず、全ての家畜とほとんどの野生動物は癒し系だと思いますが。

そうした疑念を吹き飛ばすほどの訴求力が、それらのヤギ料理にあるとは思えませんでした。案の定それ以後、披露された新しいヤギ料理が、島で流行ったり観光客の評判になった、という話は聞きません。

ヤギ肉料理喧伝法

ちょっと大げさに言えばヤギ肉料理を流行させる秘策が筆者にはあります。それは前述とは逆に、女性に嫌われるかたちでのヤギ肉料理のありかたです。つまりヤギ肉の持つ特徴を科学的に解明して、それを徹底的に宣伝し売り込む方法です。

ヤギ肉には精力増進作用があるといわれます。ならばその精力を、ズバリ「性力」と置き換えても構わないような、ほのかな徴(しるし)が肉の成分に含まれてはいないか。もしそれがあればシメたものです。

ヤギ肉を食べれば男の機能が高まる、精力絶倫になる、バイアグラならぬヤギアグラを食して元気になろう!などと喧伝すればいい。

もしもそれが露骨すぎるというのなら、少しトーンを落として「ヤギ肉を食べれば活力が生まれる」ヤギ肉はいわば「若返り薬」だ、などと主張してもいい。

もちろん女性にも好感を持ってもらえるような特徴的な成分がヤギ肉に含まれているのなら、そこを強調すればさらに良い。

たとえば、やはり「若返り作用」の一環で肌がみずみずしくなる、シミなどを抑える。あるいは牛肉や豚肉などと比較するとダイエットに良い効果が期待できる、など、優れた点を徹底的に探して喧伝するのです。

料理の見た目や味やレシピではなく、ヤギ肉が持つ他の食材とは違う「根本的な特徴」というものでも発見しない限り、ヤギ肉料理が日本で大向こう受けするのはきわめて難しいように思います。

それならばいっそ、今のまま、つまり昔からある料理法のままで、「珍味」が好きな少数の観光客に大いに喜んでもらえる努力をしたほうが良いのではないか。要するに薄利多売ではなく、「臭み」という希少価値を売り物にする元々の島ヤギ料理の商法です。



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