決死の戦いはとことんまで

4月に入って、イタリアの新型ウイルス感染者の一日あたりの増加数が、上限に達して安定期に入った可能性が高い、という説があります。だが例えそうでも、あくまでも安定期なのであり、終息に向かい始めたというのはまだ全く当たらないと考えるべきでしょう。

感染状況が安定期に入ったらしいという国民保健局の報告を受けて4月1日、イタリア政府は外出禁止令を緩めて、親が付き添っての子供の散歩を認める、との達しを出しました。すると国中が騒然となりました。

自宅に閉じ込められて苦痛を強いられている人々の間には歓声が上がりました。特に子供のいる家庭は喜びました。学校閉鎖で自宅に詰め込まれた子供も、面倒を見る親も、ストレスが高まっているのです。

一方で激しい非難も沸き起こりました。Covidi19の毒牙に苦しむロンバルディア州を中心とする北部各州は、いま規制を緩めればここまでの努力が水の泡になるとして、政府の告示を「無意味で無責任、且つ狂気の沙汰」とまで呼んで猛烈に反発したのです。

北部各州の抗議は健全なものです。たとえ感染状況が真に安定期に入っているとしても、イタリアのCovid19禍の現状は依然として無残極まりないものです。ここで厳しい移動規制に象徴される封鎖・隔離策あるいはロックダウンを解くのは危険が多すぎる。

北部の州知事らの猛烈な糾弾にさらされたイタリア政府は、あっさりと間違いを認めました。翌日には早速方針を転回して、コンテ首相は全土の封鎖を4月13日まで継続する、とテレビ演説で表明しました。

4月13日まで、としたことには理由があります。4月12日はキリスト教最大の祭り、復活祭(イースター)です。復活祭当日は家族や友人、またゆかりの人々が集って大食事会を開きます。

復活祭の食事会では子ヤギや子羊の肉が供されます。ことしは恐らくそれらの肉の消費も大きく落ち込むことでしょう。

新型コロナウイルスは多くの人の命を奪う代わりに、たくさんの子ヤギと子羊のそれを救うという、残虐と慈悲が交錯する皮肉なドラマも演出しそうです。

復活祭の翌日の13日は小復活祭(パスクエッタ)と呼ばれる休日。その日は多くの人々が、やはり家族や友人などと共に野山に出てピクニックを楽しむ習慣があります。

コンテ政権は祭りの両日の人の集まりを規制することで、感染拡大を防止しようと考えているのです。政府は同時に、あたかも4月14日には全土の封鎖が解除されるかのようなもの言いもしていますが、今の状況では規制はその後も継続される、と見るのが妥当でしょう。

いずれにしてもイタリアのロックダウンは、状況を確認しながら最長7月いっぱいまで継続される、と以前から決められています。それはつまり、7月以前の全面解除もある代わりに、期限の後も規制が続く可能性がある、ということです。

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