3密空間で食べるイタメシの味

イタリアの経済は新型コロナウイルスによって破壊されました。いうまでもなくそれは欧州のほとんどの国を含む世界中が同じ状況ですが、欧州財務危機以来の不況と借金苦に悩まされているイタリアの現実はより深刻です。

ジュゼッペ・コンテ首相が5月4日からのロックダウンの段階的緩和を発表したとき、営業開始が遅れるレストランなどの飲食業者と美容師組合などは早速大きな抗議の声を上げました。

それに呼応するように、南イタリア・カラブリア州のヨーレ・サンテッリ( Jole Santelli )知事は、レストランほかの飲食店の営業を政府が指定する6月1日からではなく、解除初日の5月4日から許可すると宣言して物議をかもしました。

またベニスではレストランオーナーや美容師らが街の中心のサンマルコ広場に集合して、6月1日を待たずに営業を許可しろと抗議デモを行いました(冒頭写真)。世界に名高い観光都市ベニスを象徴する美しい広場での怒りの集会は、主催者の思惑通りメディアの注目を集めました。

5月4日の第一段階の規制緩和では、約450万人が働く製造業と建設業の営業が許可され、5月18日からは飲食業と美容業以外のほとんど全ての業種の営業が始まる、とされました。しかし営業許可が遅れる業種からは強い不満が沸き起こったのです。

感染拡大への恐れと、経済のさらなる破壊を懸念する声が激突して、イタリアは騒然としました。多様性を何よりも重んじ、自己主張の噴出を当然のこととして受容するイタリア社会の、いつも通りのにぎやかな光景です。

業種ごとに営業許可の日にちが違うのは不公平という反論と、経済の全面的な再始動を要求する財界からの強い圧力にさらされたイタリア政府は、ついにレストランや美容室を含む全ての業種の営業を5月18日付けで許可すると発表しました。

それを受けてイタリア高等保健研究所(ISS)と全国労働災害保険機構(INAIL)は、レストランなどの飲食店とビーチ施設等の営業条件を発表しました。その内容は:

1.客はレストランへの出入りの際にはマスク着用を義務付けられ、トイレに行くときなど席を離れる際にもにも必ずそれを着ける。

2.テーブルはウエイターの動きも勘案して、4メートル四方内に1セットだけ置くこと。飲食費の精算は人と人の接触を避けるために、できるだけWebなどによる電子決算にすること。

3.メニューは伝統的なものではなく人が直接に手で触れないものにする。たとえば黒板表記にする。あるいは使い捨ての紙などに書く。またWEBやアプリで見る形などにする。

3.店の必要な場所、たとえばバスルームの出入り口などにはたえず消毒薬を用意しなければならない。客はその使用を義務付けられる。

4.また入店を待って客が集まったり、待合室で人が密集したりすることを避けるために、予約制で営業すること。同じ理由でビュッフェも禁止とする。

など、など。


それらの設備やルールの多くは店側に課せられるものです。だが客にとってもひどく窮屈な内容です。むろん必要不可欠の措置なのでしょうが、いかにも重苦しい。

個人的には、食べている時間以外は店の中でもマスク着用が義務付けられる環境は、密閉空間にウイルスがふわふわ浮かんでいるような印象。そんなところで、わざわざ金を払って食事をする気には残念ながらなれません。

しかしレストランでぺちゃくちゃ“しゃべり”ながら食べたり、ビーチで家族や友人と“しゃべり”遊んだり、いつでもどこでも寄り集まって“しゃべり“ふざけるのが大好きなイタリア人にとっては、ウイルスがいようがいなかろうが、レストランに行けること自体がきっと既に至福なのです。



facebook:masanorinakasone

official siteなかそね則のイタリア通信

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください