ロックダウン解除の泣き笑い

つい最近まで世界最悪の新型コロナ被害国だったイタリアも落ち着いて、通常化へ向けて歩みを始めました。しかし問題は尽きません。

6月3日に予定されているロックダウンの「ほぼ全面解除」を前に、厳しい外出禁止策に疲れ果てた人々が、大挙して街や海やその他の歓楽地に繰り出して物議をかもしたりしています。

マスクの着用や対人距離の確保などの感染予防も忘れて、はしゃぐ人々の様子は欧州で最初の且つ最も長かったロックダウン策の過酷を物語っています。

9割以上のイタリア国民が支持してきたロックダウンですが、人々の心と体への負担は耐えがたいレベルにまで達しています。

欧米のひいては世界のロックダウン策と、そこからの出口策の多くは、イタリアが先鞭をつけました。

イタリアはロックダウンの施行法を中国に倣いましたが、民主主義国家ですので一党独裁国の強権的手法をそのまま用いることはできず、あくまでも民主主義の枠組みの中で敢行しました。

その意味でイタリアの先駆けは画期的なものでした。他の欧米諸国が一斉にそれに倣ったのも肯けます。

ひとつ付け加えておけば、イタリアのロックダウン策は国内外から「国民の自由行動を保障する憲法に違反している」とさえ批判されました。

ところが中国政府の専門家は、イタリアのロックダウンは「生ぬるい」と斬って捨てました。独裁国家では権力は、人権も自由も民意も全て無視して思いのままに何でもできますから、そんな発言ができるんですね。

イタリアにおける突然の感染爆発。それを受けての前代未聞のロックダウン。また医療崩壊の悲惨などは、日本でも逐一報道されていました。

しかし感染爆発の連鎖がスペインからフランス、ドイツ、やがてイギリス、アメリカと伝播するに従って、日本の報道はたちまち仏独英米に移りイタリアは忘れ去られました。

欧州は英独仏が中心、また日本の「宗主国」はアメリカ、という報道界(日本国民)の思い込みが露骨に出ました。いつものことです。

ただ筆者は、映像キュメンタリーが専門ではありますが、報道番組も多く手がけてきましたので、「報道の偏向体質」の担い手のひとりでもあります。

したがって日本の報道や報道姿勢、またその担い手などを批判する場合には、常に自戒の意味も込めて発言していることは付け加えておきます。

新聞テレビSNSなどにあふれるそれらの「偏向報道」を監視しつつ、筆者はイタリアに居を構え且つイタリア-特にその多様性-を愛する者としての役目も意識しています。

つまり、一貫してこの国の情報を流し続けることです。その意味も込めて、新型コロナ関連では、欧州の中でもまずイタリアの情報を優先させて発信しています。

イタリアは3月10日に導入したロックダウンを、5月4日を皮切りに段階的に緩和し始めました。それはおよそ一週間単位で拡大されてきています。

政策は今のところはうまく行っています。感染の拡大も抑えられています。いうまでもなくウイルスとの闘いは続きますが、かつてのイタリアの惨状は過去のものになりつつあります。

そこでイタリア政府は先日、「感染拡大が再燃すれば即座にロックダウンに戻る」ことを条件に、6月3日をもってロックダウンを全面解除する、と発表しました。

すると前述の如く、人々が解除の10日も前の特に週末などに、一斉に自宅から飛び出しては遊びほうけ、大騒ぎになったりしているのです。

残念ながら新型コロナとのイタリアの闘いは全く終わってなどいません。感染流行第2波への警鐘はけたたましく鳴り響いたままです。

そうした状況なども勘案して、 イタリア政府は 各州間の人の移動に規制をかけ続けることも検討しました。しかし5月29日夜、 予定通り6月3日に全面解除すると決定しました。

ちなみにロックダウンの解除日が、6月1日の月曜日ではなく6月3日の水曜日とされているのは、間の火曜日がイタリア共和国記念日になっているからです。

第2次大戦後の1946年6月2日、イタリアでは国民投票により王国が否定されて、現在の「イタリア共和国」が誕生しました。以来その日は共和国記念日となっています。

共和国記念日は祭日です。そこで週末と旗日の火曜日に挟まれた月曜日も休みにして、5月30日から6月2日までの4日間が連休。その連休が明ける6月3日が解禁日と決まりました。

                           

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official siteなかそね則のイタリア通信

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