新型コロナパンデミック~中国は有罪?無罪?

《3月30日執筆記事》

イタリア時間2020年3月30日午前9時現在、世界の新型コロナウイルス感染者数は722289人。感染者数の多い順にアメリカ142502人、イタリア97689人、中国82149人。

以下スペイン、ドイツ、フランス、イラン、イギリスと続き、オランダとベルギーも1万人を超えて、感染者数9661人の韓国を上回りました。

筆者はイタリアの新聞corriere della seraが転載するジョンズ・ホプキンズ大学発信の掲示板をリアルタイムで追いかけていますが、いつも気になることがあります。それが中国に関する数字です。

周知のように新型コロナウイルスは中国の武漢が発祥地とされます。中国はそれを否定し、あまつさえウイルスは米軍が武漢に持ち込んだ、とも主張しています。

何が真実で何が虚偽であるかは歴史が証明するでしょうが、個人的には筆者は中国独裁政権の主張をあまり信用しません。だがそれは同時に、アメリカの言い分を鵜呑みにすることも意味しません。

特にトランプ大統領になってからのアメリカの政権の主張は、時として一党独裁国中国、独裁国北朝鮮、変形独裁国ロシアなどのそれと同じ程度に歪んで見えることも少なくありません。

それでも、また「お山のトランプ大将」への不信感とは関わりなく、新型コロナウイルスに関する中国の主張や発表する数字は、眉に唾をつけて見るべき、と自分に言い聞かせています。

それは筆者が、中国独裁政権の本来の隠蔽体質と、新型コロナウイルス情報を歪曲した初期の彼らの動きを懐疑的に見ているからです。従ってそれは、いわば中国の身から出た錆です。

中国の一党独裁政権が発生した新型コロナウイルスの感染情報を隠蔽せず、また面子にもこだわることなく初期の段階でウイルスを抑え込んでいれば、世界的なパンデミックはあるいは避けられたかもしれないのです。

今となっては、むろん世界は中国も共にパンデミックの収束を目指して一致団結しなければなりません。中国の生き残りとそれ以外の世界の生き残りとは同じ運命です。だがそれは-もしも中国にパンデミックの責任があるなら-彼らがその責任を取らなくても構わないということを意味しません。

冒頭に記した2020年3月30日午前9時現在の中国の感染者総数82149人から、死者数と回復者数を差し引くと、同日現在の中国の実質のCovid19患者は2960人です。

中国の死者数は、最大被害地の湖北省の3186人と、河南省22人、 黒竜江省13人、北京市8人、 山東省7人、安徽省と海南省と河北省がそれぞれ6人、さらに上海5人、香港4人に加えて、数の少ないほかの9州の合計32人を足した3285人。治癒した者は75904人です。

実質の感染者2960人という数字は、イタリア、スペインに始まる欧州各国とアメリカの感染者数の多さに衝撃を受けている目には極めて少なく見えます。新型コロナウイルスを制圧したと主張する中国の言い分が、かなりの信憑性を帯びて聞こえるほどです。

だが同時に、中国では新たな感染者も毎日確実に出ています。それだけを見てもウイルスの完全制覇は成っていない、と言うべきではないでしょうか。それよりも何よりも、中国が発表する数字はいったいどこまで信用できるのか。基本的な疑義への答えがないのが歯がゆい。

中国の感染者数も、死亡者数も、回復した者の数も全て正確ではないという声があります。それどころか全て仕組まれた嘘だという声さえ聞こえます。特に死亡者の数は発表の数字よりもはるかに多い、という見方は根強いのです。いったいなにが真実なのでしょう。

習近平主席率いる共産党政権は、自らは病気から回復したとして、あるいは病気だがそれを押して人々の手助けをしたい、と恩を着せつつ世界の多くの国に救援物資を送っています。今日現在の世界最大の新型コロナウイルス被害国、イタリアに対してもです。

イタリアには五つ星運動という中国寄りの政党があります。その五つ星運動は現在の連立政権の一翼を担っています。五つ星運動は「一帯一路」構想への支持も表明し、協力を具体化して進める旨の覚書を中国との間に交わすようにゴリ押しをしました。そして昨年3月、ついにそれを実現させた経緯があります。

イタリアが新型コロナウイルスの流行で大きな痛手を蒙っている今このとき、中国は五つ星運動所属のディマイオ外相を介して、この国に医療スタッフやマスクなどの救援物資を送り込んだりしています。人の良いイタリア人の中には、ウイルスを撒き散らしたかもしれない中国への怒りを忘れて、習近平政権に感謝する者さえ出てきました。

イタリアでは爆発的感染流行が立て続けに発生して、もっとも医療環境の充実した北部の、そして北部の中でもさらに豊かなロンバルディア州が、あっという間に医療崩壊にまで追い込まれて苦しんでいます。地獄並みの惨状に陥っているイタリアにとって、たとえそれが誰であれ援助の手はむろんありがたいものです。

だが中国がもしも世界的なコロナウイルス禍に責任があるなら-再び再三でも繰り返して指摘しておきますが-その重大な責任をうやむやにしたまま、何食わぬ顔で援助国の役割を演じるのは許されるべきことではありません。

イタリアほかの国々の困窮を尻目に、中国はウイルスの抑え込みに成功しつつある、とも主張しています。事実なら喜ばしいことです。だが習近平主席が武漢を訪れた後には、それまで新規感染者の数が減っていたのに、ふいに増加に転じたという報告もあります。例によって隠蔽工作が成されているのなら、それもまた許しがたいことです。

世界では感染が広まるにつれて、アジア系の人々への差別や偏見が強くなり、暴力にまで発展するケースも出ています。中国人と見た目が違わない日本人も差別されたりしています。その意味ではわれわれ日本人と中国人は同じ運命を背負っています。手を取り合って差別や偏見と戦わなければなりません。

だがそのこととパンデミックを呼び込んだ責任とはあくまでも別の議論です。そして最後にこのことも繰り返して言っておきたい。つまりそれらの論難は、パンデミックをもたらした巨大責任は中国にある、と世界が確認した場合にのみ成立し、且つ糾弾の矛先は中国の権力機構だけに向けられるべきです。なぜなら中国人民の多くももまた一党独裁政権とcovid-19の被害者にほかならない、と考えるからです。(2020年3月30日)

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