先日の欧州選手権でのイタリアの化けは偽者だったかも、かい?

イタリアは2022年W杯出場権を逃したかもしれません。

W杯欧州予選グループCでスイスに首位を奪われて、激烈な「仁義なき戦い」が繰り広げられるに違いないプレーオフに回ったからです。

しかもそこでは強豪国のポルトガルと激突する可能性が高い。

プレーオフ決勝戦で敗れれば、イタリアは2018年に続いて2大会連続でワールドカップから締め出されることになります。

イタリアは2006年にW杯を制して以降、深刻な不振に陥り、2018年にはW杯ロシア大会への出場権さえ逃しました。

だが同じ年にロベルト・マンチーニ監督が満を持して就任。再生へ向けての治療が開始されました。

治療は成功してイタリアは回復。2021年7月には53年ぶりに欧州選手権を制しました。

イタリアの長い低迷の最大の原因は、違いを演出できるファンタジスタ(ファンタジーに富む創造的なフォーワード)がいないからだ、と筆者はずっと考えそう主張してきました。

だがマンチーニ監督は、ファンジスタが存在しないイタリア代表チームを率いて、見事に欧州選手権で優勝しました。

彼はそれによって、傑出した選手がいないイタリアチームも強いことを証明し、彼自身に付いて回っていた「国際試合に弱い監督」という汚名も晴らしました。

筆者も彼の手腕に魅了されました。

マンチーニ監督がいる限り、再生したイタリア代表チームの好調はしばらく持続する。欧州選手権に続くビッグイベント、2022W杯でも活躍し優勝さえ視野に入ったと考えました。

ところが早くも障害にぶつかりました。楽々と予選を突破をすると見られた戦いで引き分けを繰り返し、ついにはプレーオフに追い込まれたのです。

しかも運の悪いことにそこには、前回の欧州選手権を制したポルトガルも同グループにいます。順当に行けばイタリアとポルトガルは、一つの出場枠を巡って争います。

イタリアは欧州選手権で優勝した後、軽い燃え尽き症候群に陥っています。そのことが影響してCグループでスイスの後塵を拝したと見ることもできます。

プレーオフで強豪のポルトガルが立ちはだかるのは想定外ですが、障害を克服した暁にはイタリアは「逆境に強い伝統」を発揮してW杯で大暴れするかもしれません。

いや、きっと大暴れする、と言えば明らかなポジショントークですが、客観的に見てもその可能性は高そうです。

だが強いポルトガルには世界最強のプレーヤーのひとりであるロナウドがいます。ロナウドはひとりで試合をひっくり返す能力さえある怖い存在です。

イタリアと対峙するときのロナウドは、さらに怖さを増すことが予想されます。

それというのも彼は、3年間所属したイタリアのユヴェントスからお払い箱同然の扱いでトレードに出されました。アッレグリ新監督の意向でした。

過去の実績を頼りに自信過剰になったアッレグリ監督は、ロナウドはその他大勢のユヴェントス選手となんら変わるところはない。全て私の指示に従ってもらう、という趣旨の発言をしました。

「ユヴェントスを勝利に導くのは、一選手に過ぎないロナウドではなく優れた監督であるこの私だ」という思い上がりがぷんぷん匂う空気を察したロナウドは、静かにユヴェントスを去りました。

そうやって英国プレミアリーグに復帰したロナウドは、早速9月の月間MVPに選ばれるなど衰えない力を見せつけています。

一方、ロナウドのいないユヴェントスを率いるアッレグリ監督は絶不調。間もなく解任されそうな体たらくです。

ロナウドはアッレグリ監督への恨みつらみはほとんど口にしていません。だが、いつもよりも激しい闘志を燃やしてイタリア戦に臨みそうです。だから怖い。

それでもイタリアが、ロナウドのポルトガルを退けてW杯本戦に乗り込んんだ場合には、イタリアのほうこそ怖い存在になるでしょう。

そしてその後、W杯本戦をイタリアが「強いのか弱いのかよく分からない」じれったい調子で勝ち進むなら、イタリアの5度目のW杯制覇も夢ではなくなります。

イタリアはヨタヨタとよろめきながら勝ち進むときに真の強さを発揮します。

それが魅力の、実に不思議なチームなのです。

 

 

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イタリアは独裁者カダフィの亡霊を無視できない

2011年、アラブの春の騒乱の中で殺害されたリビアの独裁者ムアマー・カダフィ大佐の息子セイフイスラム氏が、12月の大統領選挙への立候補を表明しました。

セイフイスラム氏はカダフィ大佐の次男。かつては独裁者の父親の最も有力な後継者と見なされていました。

そして彼は父親から権力を移譲された暁には、欧米民主主義世界と親和的な立場を取るだろうとも期待されていました。

それというのも彼がロンドンの著名大学ISE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス )で学び、英語にも堪能だからです。

欧米のメディアは時として、独裁者の子弟やその対立者が欧米で学んだ場合、彼らが民主主義に洗脳されて帰国後に同地に善政や徳をもたらすと単純に考えることがあります。

例えば先年死去したジンバブエのムガベ大統領やシリアのアサド大統領夫妻などがその典型です。

だがムガベ大統領は英国から帰国後にジンバブエに圧政を敷きました。同じく英国で眼科を学んだアサド大統領は、シリアを牛耳って民衆を苦しめ殺害し続けています。

またアサド大統領の妻アスマ氏は、一時期は欧米メディアに「砂漠のバラ」「中東のダイアナ妃」などと持ち上げられましたが、後には夫に負けるとも劣らない民衆の敵であることが暴露されました。

欧米のメディアは、ロンドン大学の一角を成すISEに留学したセイフイスラム・カダフィ氏にも過剰な期待を寄せました。だが前述のように彼も民衆を弾圧する暴君であると明らかになりました。

セイフイスラム氏は、2011年のリビア内戦で父親が殺害されたことを受けて逃亡を余儀なくされました。

また同年には父親に寄り添って民衆を弾圧したことに対して、ICC(国際刑事裁判所)が「リビア国民への人道に対する罪」で彼に逮捕状を出しました。

逃亡したセイフイスラム氏は、砂漠で反政府軍につかまり裁判で死刑を宣告されました。しかし2017年には釈放されました。理由は判然としません。

セイフイスラム氏以外のカダフィ大佐の家族も殺害されたり国外に逃亡したりしましたが、その際彼の妻と息子らは国庫から莫大な富を盗み出したと見られています。

その富は、カダフィ大佐が40年以上に渡ってリビアの石油を売っては着服し続けた莫大な資金と重なって、さらに膨らんで天文学的な数字になるとされます。

だがカダフィ政権が崩壊して後のこれまでの10年間で、秘匿された金がリビア国民に返還されたことは一切ありません。

セイフイスラム氏は、政治的な動きが特徴的な存在で、家族とは別行動を取っています。だが、何らかの方法でリビアから盗み出された金を流用しているとも信じられています。

彼は自国民を虐殺しリビア国民の財産も盗んだ無頼漢ですが、10年の逃亡生活を経てあたかも何事もなかったかのように表舞台に登場しました。

リビアは2011年以来、ほぼ常に内戦状態にあります。独裁者のカダフィはいなくなったものの混乱が続いて、独裁にも劣らない非道な政治がまかり通っているのです。

セイフイスラム・カダフィ氏はその混乱に乗じて大統領選挙に立候補しました。もしも彼が当選するようなことがあれば、リビアの民衆は2重3重にカダフィ一族の横暴にさらされることになるでしょう。

リビアの政治状況はここイタリアに影響をもたらします。リビアがかつてイタリアの植民地だったからです。イタリアには同国への負い目があります。

イタリアはドイツと同じように過去を清算し、謝罪し、リビアとも良好な関係を築いています。日本のように歴史修正主義者らが過去を否定しようと騒ぐこともありません。

だがリビアは近年、地中海を介してヨーロッパに渡ろうとするアフリカや中東などの難民・移民の中継地となっています。リビアと親しいイタリアが目と鼻の先にあるからです。

イタリアはリビアと連携して不法な難民・移民の流入を阻止しようと努めていますが、リビアの政治状況が不安定なために中々思い通りには進みません。

世界はトランプ米大統領の登場やBrexit、また欧州大陸に台頭する極右など、風雲急を告げる状況が続いています。

そこにコロナパンデミックが起きて、国際社会はますます分断され混迷の度を深めて憎悪と不信と不安がうずまいています。

消息不明の闇の中からふいに姿をあらわして、リビアの大統領選挙に立候補したセイフイスラム氏は、混乱する世界のもうひとつの象徴に見えて不気味でさえあります。

同時にイタリアにとっては彼は、隣国でかつての植民地であるリビアが、一体どこに向かうのかを示唆しあまつさえイタリアの国益にも大きく影響しかねない、極めて現実的な存在なのです。

 

 

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ワクチン過激派に変貌したオーストリアの真向勝負

11月15日からワクチン未接種者をロックダウンしたオーストリアは、22日からは対象を拡大して全国民の移動を禁止する完全ロックダウンに入る、と発表しました。

オーストリア政府は、およそ200万人のワクチン拒否者の国民をロックダウンするだけでは感染爆発を抑えられない、と判断したのです。

また来年2月からは12歳以上の住民全員へのワクチン接種を義務づける方針も発表しました。

実行されれば、欧州では初めての措置となります。

欧州を襲っている第4波は、東欧各国と隣接するオーストリア、またドイツ等を大きく巻き込んで急拡大しています。

中でも人口が900万人に満たない小国オーストリアは、1日当たりの感染者数が1万人を超えて、医療危機を含む深刻な事態に陥っています。

そこで反ワクチン人口のロックダウンを断行し、それだけでは飽き足らずに完全ロックダウンに踏み切り、果てはワクチン接種の義務化さえ強行する計画です。

イタリアのお株を奪う「初物づくし」の厳格なコロナ感染防止施策のオンパレードです。

2020年、コロナの感染爆発と医療崩壊に見舞われたイタリアは、世界初の全土ロックダウンを敢行しました。前代未聞のアクションでした。

イタリアはその後も世界初や欧州初という枕詞がつくコロナ対策を次々に打ち出しました。ワクチンの接種率も欧州のトップクラスです。

おかげでイタリアの感染拡大は比較的に小規模で推移してきました。

しかし隣国のオーストリアは、これまでのワクチン接種率が65%に留まり、急激な感染拡大に襲われています。

オーストリアはそれを踏まえて過激な措置を連発しているのです。

ところがオーストリアの苦境は、その北隣の大国ドイツにも伝播しつつあります。

そればかりではありません。

過酷な全土ロックダウン以降も厳格なコロナ対策を取り続けて、困苦をなんとかしのいできた南隣の大国、ここイタリアにも波及しようとしています。

イタリアを含む欧州各国は、今このときに厳格なコロナ対策を導入して感染を減らし、少しでも平穏なクリスマスを迎えたいと画策しています。

平穏なクリスマスは、旺盛なクリスマス商戦と経済興隆を呼び込みます。

その意味でも万難を排して感染拡大を阻止したいのです。

しかしその思惑は、ワクチンを無体に拒み続ける人々の存在によって阻害される可能性が高い。

そこで各国政府は、国民の分断をさらに深めかねないことを承知で、反ワクチン人口の封鎖やワクチン接種を義務化して危機を乗り切ろうとしています。

それが功を奏するかどうかは、ワクチン接種をためらう人々のうちの一定数が翻意して、接種会場に向かうか否かにかかっています。

ワクチンの接種を義務化しても、彼らの家に押しかけたり引きずり回したりして注射を打つわけにはいきません。

中国や北朝鮮などに始まる、世界のならず者国家なら朝飯前でしょうが。

結局、彼らを説得する以外には道はないように見えます。

それでも敢えて反ワクチン派の住民をターゲットに厳しい措置を取らなければならないところに、コロナ対策の険しさがあります。

オーストリアは欧州各国に先駆けて敢えて過酷な選択をしました。筆者はその決断を支持し施策の成功を腹から祈ります。

 

 

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反ワクチン論者は自らを「自らの自由意志」で自由にロックダウンすれば良い

オーストリアはコロナ感染急拡大を受けて、2021年11月15日からワクチン未接種者をロックダウンしています。

事実上国民の4分の一強が対象となります。オーストリアではワクチン接種対象の国民のほぼ3分の一が接種を拒否しています。

言葉を変えれば、反ワクチン派の住民を外出禁止措置にした時点で、同国のワクチン接種率は65%程度。EU加盟国内では最低水準の接種率です。

ロックダウンによって彼らは仕事や食料品の買出し以外には外出できません。警察は抜き打ち検査で違反者を洗い出します。

違反すると最高1450ユーロ(19万円弱)の罰金を科される可能性があります。

オーストリアの隣国、ここイタリアのコロナ感染者もじわじわと増えて、11月17日の感染者数は1万人を超えました。ことし5月以来となる高水準です。

ドイツの1日あたり5万人超よりは状況はましですが、感染は拡大の一途をたどっています。

感染した者の多くがワクチン未接種者です。

また集中治療室に運ばれた患者のおよそ8割もワクチンを接種していない者です。

ワクチン拒否者は自主ロックダウンに入るべきでしょうが、そんな良識を彼らに求めても恐らく無理でしょう。

ですのでイタリアもオーストリアに倣って、彼らへの封鎖を強制するべき時期に来ているのかもしれません。

欧州では感染対策の厳しい措置は、これまでほとんどの場合はイタリアが先鞭をつけてきました。

2020年2月、イタリアは孤立無援のままコロナ地獄に陥りました。そこには見習うべき規範が何もありませんでした。

イタリアは暗中模索で世界初の全土ロックダウンを敢行しました。

イタリアはその後も医療従事者へのワクチン接種義務、娯楽施設でのグリーンパス提示義務、全労働者へのグリーンパスの提示義務など、世界初や欧州初という枕詞がつく過酷な施策を次々に導入しました。

それは割合にうまく運んで、ロックダウンを含むいくつかの施策は、欧州ほか世界の国々にも模倣されました。

現在の感染拡大は欧州では第4波に当たります。その兆しが見えるとすぐに、イタリアではワクチン接種の義務化や、ワクチン未接種者へのロックダウンを敢行するべきという声も起こりました。

だが、それらは実現されずに来ました。ここまでに繰り出された厳格な施策が功を奏して、感染拡大が比較的ゆるやかだったからです。

その一方で、ドイツやオーストリアまた東欧諸国では感染が急拡大しました。原因はワクチン接種率の低さだと見られています。

そして先日、冒頭で触れたように、オーストリアがついにワクチン拒否者にロックダウンを強制することになりました。

ドイツも東欧各国もオーストリアに続く可能性があります。

イタリアもクリスマスを前に反ワクチン人口に外出規制をかけるかもしれません。

ワクチン接種が自発的な選択で成されなければならないのは、民主主義世界では自明のことです。

誰も個人の自由や権利を冒すことはできないし冒してもなりません。

それでもワクチン拒否を押し通す人々のせいで感染拡大が続くならば、政府は国民の健康を守るためにそれらの人々に外出禁止などの強い枷を掛けるでしょう。

緊急事態ですからその措置は許されるべき、と筆者も考えます。

個人の自由を盾にワクチンの接種を拒絶している人々は、イタリア政府に強制される前に、自らの「自由意志」でロックダウンを導入してはどうでしょうか。

そうしなければ感染拡大が繰り返され、社会全体の行動の自由が引き続き制限される可能性が高くなります。

「自らの自由は守るが他者全体の自由はどうにでもなれ」という態度では、他者の世論全体にはなかなか理解されません。

反ワクチン派の人々はそろそろそのことに気づくべきです。

 

 

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温暖化の恩恵は悪魔の囁きか

地球全体の気温上昇を1.5℃までに抑えようとするCOP26は紛糾し、会議期間が一日延長されたにもかかわらず、またもや問題を先送りにする採択をしてお茶を濁しました。

誰もが問題の核心を知っていて、誰もがエゴむき出しにして自らの犠牲を逃れようとしています。

地球を健康体に戻そうとする試みは相変わらず困難を極めています。

太平洋の島国をはじめとする被害国を除いて、CO2大量排出国のほとんどが、問題を真に自らの痛みとして捉えられないことが混乱の原因です。

地球規模で破滅をもたらすかもしれないと恐れられる温暖化と、それによる気候変動は、ことし夏のイタリアに48,8℃という欧州記録の異常気温をもたらしました。

欧州ではその1ヶ月前の7月、ドイツ、ベルギー、オーストリアなどを豪雨が襲って河川が氾濫し、多数の人命を含む大きな被害が出ました。

温暖化は単に気温を上昇させるだけではなく、異様な酷暑、豪雪、山火事、巨大台風、海面上昇などの異常気象をもたらすとされています。

異常気象は高温と冷温が交互にやって来るような印象もあって、特に冷温やドカ雪が降ったりすると、熱をもたらすという温暖化は実は嘘ではないか、という誤解を与えたりもします。

トランプ前大統領に代表されるポピュリストらは、そのことを利用して温暖化理論はまやかし、と叫んで世界をさらに混乱に陥れたりします。

筆者の小さな菜園の野菜たちにも一見混乱がもたらされます。温暖化によって野菜の成長が極端に早まり、あっという間に花が咲いて結実します。それは植物の早い死滅を意味します。

ところが一方で、気候がいつまで経っても温暖なために、夏の終わりには命を終える野菜たちが長く生き続ける、という一見矛盾した現象も起きるのです。

筆者の菜園ではほぼ毎年それに近い変化が起きています。しかし自然の変化は異様なものではなく、人間だけが不審がる「自然の常態」、というのがほとんどだと思います。

そうはいうものの、近年はそれが普通の域をはるかに超えて、実際に「異変」になっていると感じられることが多い。つまりそれが温暖化の影響ということなのでしょう。

異様さは近年はますます目立つようになっています。例えば筆者の菜園では2016年も野菜が極端に長命でした。その年は12月近くなっても多くの野菜が枯れなかったのです。

だが長命だったのはほとんどが夏の葉野菜でした。実が生る果采類は、夏の終わりから秋の初めには普通に命を終えました。

ところがことしはまた状況が違います。菜園の果菜類が長命で、9月にはほとんどが枯れるピーマンとナスが、11月になっても実を付け続けているのです。

トマトも未だ完全には枯れず、わずかですが実を付けている茎があります。

鮮やかな朱色が好きで、ほぼ観賞用だけのつもりで毎年作る唐辛子も健在です。

唐辛子はもう少し菜園に置いて楽しもうとさえ考えましたが、料理用に欲しいという家族のリクエストに応えて収穫しました。

ピーマンとナスはまだ育ちそうなので様子見も兼ねていくつか残しました。

夏野菜のほかには、冬用に白菜とラデッキオ(菊苦菜)と大根が成長中。

夏の初め、チンゲンザイが異様な勢いで伸び盛り、収穫する暇もないままとうが立ち結実して、そのこぼれ種が再び発芽しました。

またサントー白菜も、チンゲンサイ同様に早く育ち過ぎて倒れました。ところが枯れたと見えた太い茎のそこかしこから再び芽が出て育ち、今度はそこそこに収穫することができました。

両野菜ともに一度枯れたものが夏の間に再生して、収穫できるまでに育ったのです。いわば二期作です。

二期作は温暖な地方で行われる農業。筆者の菜園で起きたことも、やはり温暖化と関係しているのではないかと思います。少なくとも空気が寒冷ならあり得ない現象です。

チンゲンサイとサントー白菜が異常生育をして、収穫前に結実したのは温暖化の負の影響ですが、それらが再発芽したり11月まで夏果菜類が収穫できるのは逆に好影響と言えるのではないでしょうか。

もっともそうやって喜ばせておいて、最後には大きなドンデン返しがありそうにも見えるのが、不気味でないこともないのですが。。

 

 

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菜園のまろうど

2021年11月6日土曜日、秋晴れの筆者の菜園に一羽の雉が舞い降りました。

菜園には多くの鳥がやって来ますが、場違いな巨大な雉の姿は圧巻です。

呆然と、しかしワクワクしながらスマホを向けて訪問者の一挙手一投足を追いかけました。

雉は冬枯れの、だがまだ緑も見える、コの字形の菜園の中を行きつ戻りつして動き回ります。

日差しが強くて筆者はしばしば珍客の姿を見失いました。

鳥はまるで勝手知ったるかのように菜園を縦横に動き回り、野菜の枯れ色に擬態したり、隠れたり、紛れ込んだりして筆者の目をくらましたのです。

菜園は中世風の高い壁を隔てて隣の広いぶどう園とつながっています。

ぶどう園は有機栽培です。有機栽培なので昆虫などの生き物が増え、それを狙う動物も目立つようになりました。

そこにも多くの鳥がやって来ます。それを追うらしい鷹も上空を舞います。夕刻と早朝には小型のフクロウの姿も目撃できます。

ぶどう園にはネズミなどの小動物も生息していると容易に想像できます。

ぶどう園の隣の筆者の菜園にも多くの命が湧きます。菜園も有機栽培なので虫も雑草も思いきりはびこっています。

ヘビもハリネズミもいます。石壁の隙間や2箇所の腐葉土場の周囲、また夏は野菜とともに生い茂る雑草の中に紛れ込んでいたりします。

ヘビは毒ヘビのVipera(鎖蛇)ではないことが分かっているので放っておきますが、出遭うのはあまりうれしくありません。

向こうもそれは同じらしい。ここ数年は姿を見ませんが、脱皮した残りの皮が壁や野菜の茎などにひっかかっていて、ギョッとさせられます。

ヘビは筆者と遭遇する一匹か、命をつないだ固体が、今日もその辺に隠れているに違いありません。

雉は菜園を行き来しつつ、しきりに腐葉土周りにも立ち止まりました。腐葉土の中にはカブトムシの幼虫に似た巨大なジムシが多く湧いています。それを食べるのかもしれません。

雉にとっては隣接する広いぶどう園と筆者の菜園は、きっとひとつながりの餌場なのでしょう。ぶどう園に寄ったついでに菜園も覗いてみた、というところでしょうか。

あるいはこうも考えられます。

イタリアはいま狩猟の季節の真っ盛りです。住宅地に近い山野や畑でも狩が行われていて、パンパンという銃声が絶えません。

雉はもしかすると銃弾を避けて飛来したのかもしれません。それならずっと筆者の菜園で遊べばいいのですが、鳥は筆者の気持ちも状況も分からないでしょう。

でも実は分かっていて、明日も明後日もずっと訪ねてきてくれるのなら、菜園での筆者の楽しみがまたひとつ増えるのですが。。

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ミニトランプ・ボルソナロの喜悦

ブラジルのミニ・トランプ、ボルソナロ大統領がイタリアを訪問して、大方は総スカンを食らいましたが一部では大歓迎されました。

ボルソナロ大統領は、ローマで開催されたG20サミット出席を口実にイタリアを訪れました。彼はサミットでも各国首脳に冷ややかに扱われました。

サミットに出席した各首脳のうちで唯一、新型コロナワクチンを接種していなかったトンデモ男が、ボルソナロ大統領です。

表向きはそのことが冷遇の原因のようですが、米トランプ氏並みの嘘や放言また傲岸な態度への反発もあったと見られます。

また新型コロナを軽視し続けて、ブラジルがアメリカに次いで多い60万人を超える死者を出している事実への、非難の空気も濃かったとされます。

イタリアの国民の一部はしかし、ボルソナロ大統領を歓迎しました。政治家で彼を暖かく迎えたのはイタリアのミニ・トランプ、サルヴィーニ「同盟」党首とその他の右翼の面々。

またベニスに近いアングイラーラでは、ボルソナロ大統領はほとんど熱狂的とも言える持て成しを受けました。彼の先祖はその町からブラジルに移住したイタリア人なのです。

そこで極右政党「同盟」所属の女性市長が、ボルソナロ大統領に名誉市民の称号を与えました。彼はその授与式典に同地を訪れて大いに歓待されたのです。

世界中から冷たい視線を注がれることも少なくないボルソナロ大統領は、実のところは、イタリアの小さな町での栄誉に気を良くして欧州にやって来たのではないか、とさえ筆者は疑います。

イタリアは痩せても枯れてもG7の一角を成す世界の民主主義大国です。そこで歓迎を受けることは、何かと非難されることが多い彼にとってはこの上もなく有難い利得に違いありません。

新型コロナウイルス感染拡大が続く中、ブラジル国内でのボルソナロ氏の支持率は大きく低迷しています。今のままでは来年の大統領選挙での敗北も確実視されているほどです。

青息吐息の大統領は、たとえわずかでも失地回復に資する可能性があるなら、と考えてイタリアに乗り込んだ可能性は否定できません。

名誉市民の称号獲得、という象徴的な意味合い以外にも イタリアを訪れるメリットはあります。同国の右派勢力と親交を深め、あまつさえ提携までも模索することです。

先に述べたサルヴィーニ氏に始まるイタリアの極右勢力は彼とは親和関係にあります。しかもイタリアの極右は右派全体の核となって勢力を広げています。

極右を熱狂的に支持する国民は少数派ですが、近年は彼らと保守層およびコロナワクチン懐疑派の人々との接点が増えてきました。

そこにトランプ大統領の登場によって勢いを得た、アメリカと欧州の「ネトウヨ・ヘイト系排外差別主義者」らが交会しました。

2018年、イタリアでは極右政党が政権入りを果たしました。それと前後して英国ではBrexitが完成し、フランスでは極右の候補者が大統領選の決選投票まで進みました。ドイツにおいてさえ極右勢力は台頭しました。

そうした世界政治の流れは今日現在も続き、トランプ主義者と極右、またそれに親和的な右派の勢いは、多くの国でリベラル派と拮抗または凌駕さえするモメンタムであり続けています。

その勢力はボルソナロ大統領とも親和的です。同時にそれは民主主義と対立するという意味で、世界のならず者国家、つまり中露北朝鮮などとも並列して捉えられるべき政治力学です。

ボルソナロ大統領を歓迎した、極右が主体のイタリアの右派勢力は、次の選挙で政権を握る可能性もあります。フランスでも反移民の政情などが手伝って、極右の勢いはとどまるところを知りません。

加えて英国のBrexit系勢力も健在です。それどころか、バイデン大統領が圧倒的な支持を集めない限り、2024年の米大統領選ではトランプ前大統領の復活当選の目もあります。

トランプ主義の台頭で分断された世界は、コロナパンデミックによってさらに対立を深め、分断され、懐疑主義が横行しました。

世界はボルソナロ的勢力、あるいはトランプ主義者のさらなる跳梁によって、ますます分断化されて憎しみの多い不安定な状況に陥りかねません。

コロナ渦中にもかかわらず且つワクチン接種さえ受けていないブラジルの“仁義なき戦い”大統領が、イタリアの小さな町アングイラーラで満面の笑みを浮かべる姿を、筆者は複雑な思いで眺めていました。

 

 

 

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