プーチン命、と叫ぶ極右のケセラセラ

イタリア極右政党「同盟」のサルヴィーニ党首が、ウクライナ国境に近いポーランドの町 プシェムィシル(Przemyśl)で、赤っ恥をかく失態を演じました。

彼はウクライナ難民を支援し連帯感を実地に表明したいとして、ウクライナからの難民が多く流入する同地を訪れました。

ところがプシェムィシルのヴォイシェク・バクン(Wojciech Bakun)市長は、サルヴィーニ党首がプーチン大統領の信奉者であることを問題にして、共同記者会見の場で面と向かって同党首を罵倒しました。

バクン市長は、プーチン大統領の似顔絵と彼を称える文句がプリントされたTシャツを持ち出して、サルヴィーニ党首の目の前に掲げました。そして言いました。

「ここにはあなたが友達と呼ぶプーチンのせいで故郷を追われた人々が、1日に5万人も国境を越えてやってきます。あなたがこのTシャツをまた着る勇気があるなら、それを着たままで難民センターまで案内して差しあげましょう。恥知らずめ!」

サルヴィーニ党首は、過去に何度もそのTシャツと同じものを着てプーチン大統領への友情と団結を呼びかけてきまsjひた。バクン市長はそのことをよく知っていて公衆の面前で彼に雑言を浴びせたのです。

サルヴィーニ党首はあっけに取られて、それからか細い声で「私は難民を支援し母親や子供たちを助けたいと思っている」と返し、そそくさとその場を離れました。

彼の背中には人々が、恥知らず、帰れ、などと叫んで追い打ちをかけました。

サルヴィーニ党首は反移民や反EUを標榜し、排外差別主義色の強い主張や政策を推し進めることで知られています。彼はフランス極右のマリーヌ・ルペン氏とも親しい。

サルヴィーニ氏はまたトランプ主義者でもあります。

彼は米大統領選挙キャンペーン中の2016年、アメリカを訪れてトランプ候補との面会を求めました。だがトランプ候補は、「Salvini who?(サルヴィーニなんて知らねえよ)」と側近にもらしただけで取り合いませんでした。

そのエピソードは当時、「サルヴィーニの“赤っ恥”事件」としてイタリアのメディアを沸かせました。

サルヴィーニ党首は今回、ポーランドとウクライナの国境の小さな町で、再び赤っ恥をかく事件を起こしてしまったわけです。

しかし、サルヴィーニ氏の名誉のために次のことも付け加えておきたいと思います。

欧州の右派、特に極右勢力は、ロシアのウクライナ侵攻によって窮地に立たされているケースが少なくありません。彼らはサルヴィーニ氏と同様に、おおっぴらにプーチン大統領を支持してきました。

欧州はウクライナを侵略し民主主義の王道を土足で踏みにじったプーチン大統領の蛮行に驚愕し、憤り、速やかに大同団結して立ち上がりました。

通常はそれぞれの利害に絡めとられて、足並みが乱れがちな欧州各国がすばやく結束したのは、恐らくプーチン大統領にとっても想定外の出来事でした。

ロシアの蛮行への欧州の怒りはとてつもなく大きいのです。

欧州の怒りはプーチン大統領を支持してきた極右勢力にも向けられています。

例えば1ヶ月後に投票が行われるフランス大統領選で、極右のルペン、ゼムール両氏への支持が急落しているのも、欧州の怒りを招いたプーチン効果のせいだと見られています。

サルヴィーニ党首が恥をかかされたのは、自業自得という面もむろんありますが、歴史の転換点に立つ欧州の暴風が、蒙昧な男を思いきり吹き飛ばした感があるのも否めません。

 

 

 

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